部分完成基準とは?その考え方や収益認識基準について解説!
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一般的な業界と違い、建設業では一つの工事にかかる時間が年単位になることも少なくありません。そのため建設業では、会計方法について色々な基準が適用されてきました。今回ご紹介するのは、そのうちの一つ「部分完成基準」です。
部分完成基準とは?
部分完成基準とは、国税庁が認めている建設業界における会計基準の一つ。企業が建設工事を請け負ったとき、以下の二つに当てはまる場合は、工事全体が完了していなくても年度内に引き渡しした分の収益を計上しなくてはなりません。
<部分完成基準が適用される条件>
・一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合
・1個の建設工事等であっても、その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を
引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合
(引用:国税庁)
一つ目の条件は、例えばある建設会社が50戸の建売住宅を請け負ったとします。1戸ずつ建設していき年度の終わりには15戸が完了し、その分の工事代金も受け取りました。この場合、「50戸の住宅を建てる」という案件そのものは完了していませんが、この工事で得られる収益の一部をすでに受け取っているので、その分を計上するということです。
二つ目の条件は、例えば全長5㎞のトンネル工事を請け負ったとします。少しずつ掘り進めて、1㎞が終わった段階でその分を引き渡し、売上となりました。まだ残り4㎞の工事は残っていますが、一旦売上を得ているのでその分の計上をするということです。
収益認識基準と部分完成基準

部分完成基準を適用しなかったとしても、収益認識基準を適用していれば工事が完成した分だけの収益計上は必須となります。収益認識基準とは2018年に公開され2021年からは適用が必須となる「収益認識に関する会計基準」のことです。
これは企業会計基準委員会が発表したもので、「本会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識することである。」と定められています。(引用:企業会計基準第 29 号 収益認識に関する会計基準)
この基準に沿って正しく収益を認識するには、5つのステップを適用しなくてはなりません。
(1) 顧客との契約を識別する
(2) 契約における履行義務を識別する
(3) 取引価格を算定する
(4) 契約における履行義務に取引価格を配分する
(5) 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する
(引用:企業会計基準第 29 号 収益認識に関する会計基準)
2021年からは建設業界に限らずあらゆる企業でこの基準が適用されるので、今回ご紹介した部分完成基準と同じように「引き渡した分の売上は当期中に計上する」という考え方が必要になります。
収益を正しく認識して適切な計上を
会計や収益に関して、これまでいくつかのルールが適用されてきました。その度に新しい内容を理解し、正しく計上しなくてはなりません。こうした経理・税務について理解することは意外と時間がかかるものですが、ここを怠ると正しく納税できず企業としての信頼性を失ってしまう可能性があります。
工事を行うという本業に集中するためにも、こうした経理面はシステムを導入するのがおすすめです。新たに生まれたルールに適した会計処理ができるように作られていることが多いので、経理にかける時間と人件費を抑えられます。今まで人力でしのいできた企業も、ぜひ一度システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。