建設業界特有の勘定科目!「未成工事支出金」とは?消費税法上どう処理する?
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建設業界は他の業界とは少し違う、独特の勘定項目があります。そのうちの一つが未成工事支出金です。これは一体どんな内容なのか、詳しく見ていきます。
建設業界の会計は特殊な方法で行われる
建設業界は他の業界とは異なる会計処理を行います。というのも、トンネルを掘ったり大規模商業施設を建設したりと、この業界では一つの案件が一年以上かかることも少なくないからです。一般の会計のように一年ごとに処理してしまうと、実際のお金の動きと会計上のお金の動きにギャップ感が生まれてしまいます。
建設業界で行われる会計処理は、工事進行基準というもの。これは工事が始まってから終わるまで、複数回に分けて計上を行うやり方です。こうすることで工事期間中に追加で発生した経費がその都度明らかになり、工事が終わってみたら赤字になったという事態を避けられます。
クライアントからの相次ぐ要求に悩まされることはなくなりますが、その分契約前にしっかりと話を詰めていく必要があること、会計処理が複数回になるのでその負担が増えることがデメリットとしてあげられるでしょう。
未成工事支出金とは

未成工事支出金とは、一般会計でいうところの仕掛品にあたります。建設現場では色々な材料が必要ですし、加工費もかかります。そこで工事が完了するまでは、それまでにかかった費用(材料費、労務費、経費、外注費、その他)を未成工事支出金として一旦処理しておくのです。
この時、進捗率から費用金額も割り出します。例えば全部で一億円の費用が掛かる案件において、工事の進捗率が50%だとしたら、一億円の50%つまり5000万円の費用がかかったと考えます。ここで問題となるのが、進捗率の割り出し方が難しく、また意図的にあいまいな金額にすることも少なくないということです。
例えば大企業や上場企業の場合、経営状態がよくないと株主からプレッシャーをかけられます。また、銀行から融資引き上げされたり新しい資金を調達もしにくくなるもの。そういったとき、これから得られる予定の利益も先に計上してしまうことが考えられます。
反対に、企業としては利益が少なく見えれば、その分収める税金が少なくなります。そこであえて今得ている利益も先送りする、いわば逆粉飾のような操作もできてしまうのです。どんぶり勘定しやすいゆえに、こうした不正が起きやすいのが未成工事支出金の問題点といえるでしょう。
建設業界の会計処理と消費税法
未成工事支出金は、あくまでも会計上の取り扱い方法です。ここで気を付けなければいけないのが、消費税法上はどう扱われるかということ。税額控除の計上時期は、資産の引き渡しを受けた日・下請外注先が仕事を完了した時となります。ちなみに、外注工事費の場合、外注先工事が終わって引き渡しが完了した時が処理のタイミングです。
控除についても注意が必要。未成工事支出金は仕入れ控除が適用されますが、それが認められない場合もあります。工事がまだ終わっていない状態で、引き渡しも完了していなければ仕入税控除はまだできません。工事が終わって引き渡しが終わったときに、未完了だった分も全てまとめて控除することになります。
つまり、経費がかかったタイミングと経費計上できるタイミングにはタイムラグがあるということです。すでに支払った分も請求書が手元にある分も、計上できないので注意してください。完成までに時間がかかると、その分経費の詳細についての情報をまとめておくのが困難になります。例えば人件費であれば、一人ひとりの日ごとの労働時間などをしっかりとわかりやすく把握しておかねばなりません。
また、少しわかりにくいのですが、原価にかかる消費税は支払いが確定した年の消費税として控除されることになります。こうした点は税務のプロフェッショナルが熟知しているので、不安がある場合は税理士などに相談するといいかもしれません。
未成工事支出金以外にも特殊な勘定科目がある

建設業の勘定科目は一般企業のと比べ、特殊な名前がついています。それがわかりにくさを増長させているので、一度この項目を整理しておくといいでしょう。
まず、「未成工事支出金」は前述の通り仕掛品と同じ扱いです。一般会計で売掛金と呼ばれるものは、「完成工事未収入金」になります。これは工事自体は完了しており、代金は翌期になるものを指しています。
「工事未払金」は一般会計の買掛金にあたるもので、労務費や材料費のうち、未払いのものを処理するための勘定科目です。「未成工事受入金」は前受金にあたり、引き渡しより前に代金の一部・全部を受領した時に使います。
「完成工事総利益」は売上総利益にあたり、仕入れ高から工事にかかった原価を差し引いた金額を指します。「完成工事高」はいわゆる売上高で、工事における収益のことです。最後に、「完成工事原価」は売掛金のことで、建設業では労務費、材料費、外注費、経費が含まれます。
未成工事支出金について理解しよう
建設業の会計は一般的な業界の会計に比べて複雑なため、理解するのに苦労するかもしれません。しかし会計を正しく処理するのは企業としてもっとも重要な事柄のひとつ。必要に応じて専門家の力も借りながら、しっかり学んでいきましょう。