工事進行基準で進捗度を判断するには原価比例法で計算する!
工事原価管理ならe2movE
工事進行基準で進める案件は、常に進捗度を把握しておくことが大切です。決算日における工事進捗度がどの程度なのかによって、経理上の数字が大きく変わってきます。そこで今回は、進捗度を判断するときに必要な原価比例法についてご紹介します。
そもそも工事進行基準とは?
建設業においては、工事進行基準と工事完成基準という二つの考え方が存在します。工事進行基準は工事の進捗に応じて売上を分散させる方法で、工事完成基準とは工事が完了し引き渡しが終わった時点で売上を計上する方法です。
工事進行基準は工事が終わるまでに何度か計上できるので、工事途中にクライアントから無理難題をつきつけられにくいというメリットがあります。何か要求があれば期毎に請求できるので、お願いする内容についても慎重になるのです。デメリットとしては、工事完成基準よりも内訳がわかりにくく、よりしっかりしたクライアントへの事前説明が必要となることが挙げられます。
工事完成基準は計上が一度で済むのでその分負担が少なく、また事前に詳細な説明をする必要性がさほどないというのがメリットです。デメリットとしては最後まで収支がわからにくいので、いざ工事が終わってみたら赤字になってしまっていたという事態を引き起こしやすい点が挙げられます。
工事進行基準で採用される原価比例法とは?

工事進行基準とは平たく言えば「工事の全体のうち、何%が終わっているので、そこまでの金額を計上しましょう」という考え方です。この「何%」すなわち進捗度を測るのに、原価比例法が使われます。
工事進行基準では、まず該当工事の収益総額と原価総額を見積します。そして決算日における工事進捗度を原価比例法で割り出すという流れです。
<原価比例法の計算例>
案件Aの場合
原価総額:1000億円
決算日までにかかった原価:400億円
400億÷1000億=0.4
=今期までの進捗度は40%
つまり、工事進捗度の算定(原価比例法)は、以下の計算式で表すことができます。
工事進捗度=決算日までに発生した工事原価÷工事原価総額
原価比例法を使って工事進捗度が割り出せたら、次に当期の工事収益を算定します。こちらは以下の計算式で表せます。
当期の工事収益の算定=工事収益総額×工事進捗度-過年度経常工事収益(既計上工事収益)
この時注意したいのが、見積もりを修正した場合。工事収益総額が変動した場合、変更後の収益総額と工事進捗度で計算すると誤差が生じてしまいます。
工事進行基準が廃止される?
もともと工事進行基準と工事完成基準はどちらも使われていましたが、2009年に「工事契約に関する会計基準」が適用され、原則として工事進行基準を採用しなくてはならなくなりました。
これが強制適用されるのは、「工事の着手日から契約に定められている目的物の引渡し期日までの期間が1年以上であること」「工事の請負対価の額が10億円以上であること」「工事の請負対価の額の1/2以上が工事の目的物の引渡期日から1年以上を経過する日後に支払われるものでないこと」という条件を満たす案件です。これ以外の工事については、工事完成基準が適用されます。
しかしこのルールは、2021年4月から変わります。このタイミングから工事進行基準ではなく、「収益認識に係る会計基準」に則って会計処理しなくてはならなくなるのです。ただし新ルールになっても工事の原価総額や工事原価の当期発生額などは計算しなくてはなりません。
収益認識に係る会計基準とは?

2021年4月からは原則として収益認識に係る会計基準が適用されます。「原則」というのは、下記の6パターンの場合はこの適用がされないためです。
・企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
・企業会計基準第 13 号「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引
・保険法(平成 20 年法律第 56 号)における定義を満たす保険契約
・顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又
は製品の交換取引
・金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
・日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第 15 号「特別目的会社を活用した不動産
の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡
こちらを見る限り、工事案件はほとんどの場合新ルールが適用されると考えてよいでしょう。
原価比例法に対応した工事管理システムの導入
建設業界では今回紹介したルール変更があり、またそのルールの運用にも特別な計算式が使われるなど複雑な面があります。そのためこれらを全て計算していると、思った以上の手間が発生し人件費もかかってしまいます。
そうした無駄をカットするためには、建設業界に特化しこうした特別な基準も織り込んだ管理システムを使うのがおすすめです。より生産的な仕事ができるよう、単純な計算などは全てシステムに任せてしまいましょう。