工事進行基準と税務処理。消費税の扱いはどうなる?
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建設企業における工事進行基準は、その内容をなかなか理解しにくいもの。特に税務上の処理については複雑に思われるかもしれません。そこで今回は、工事進行基準と税について解説していきます。
工事進行基準のメリットとデメリットがある?
まずは、そもそも工事進行基準とはどんなものなのでしょうか。建設業では一つの工事に一年以上かかることはよくあります。それにあわせ、会計も一年ごとではなく案件ごとに処理していこうという考え方が、工事進行基準です。建設業以外に、造船や機械装置製造、ソフトウェア製作といった業界でも採用されています。
メリットとしては、計上回数が増えるので、進行中の案件におけるクライアントからの要求に、その都度費用を請求できます。これにより、案件が完成してみたら赤字だったというような事態を避けられるのです。
また、クライアントからの要求が減ればその分人員を途中追加する必要もなくなります。予想だにしない人件費などがかからないですし、初めに立てたスケジュール通りに工事を進めやすくなるでしょう。
デメリットの一つととして、キャッシュフローの圧迫があげられます。売上が都度都度入ってくるため、その分外注先への支払いも必要になりますし、税金の負担も発生します。税務上の作業も増えるので、その分の人件費なども発生するでしょう。
現在は原則として工事進行基準が適応されますが、以前は工事完成基準というものもよく使われていました。これは一つの工事が終わって初めて、原価や売上などを計上するというやり方です。
会計処理が一度で済むのはメリットですが、クライアントからの要求も増えてきます。またその内容があいまいになりがちで、その案件がきちんと黒字になっているかどうかも不透明になるというデメリットがありました。
工事進行基準と税務

ある工事に工事完成基準が適応されるかどうかは、長期大規模工事要件を満たしているかどうかで決まります。税務における工事収益計上の基準を正しく判断するため、以下の三つを参考に長期大規模工事が適応されるかどうか確認してください。
一つ目の基準は、法人税法六四条第一項の「内国法人が、長期大規模工事(工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この条において同じ。)のうち、その着手の日から当該工事に係る契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が一年以上であること、政令で定める大規模な工事であることその他政令で定める要件に該当するものをいう」というもの。
二つ目の基準は、法人税法第百二十九条第一項「(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定する政令で定める大規模な工事は、その請負の対価の額(その支払が外国通貨で行われるべきこととされている工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この目において同じ。)については、その工事に係る契約の時における外国為替の売買相場による円換算額とする。)が十億円以上の工事とする」というもの。
三つめの基準は、法人税法第六十四条第二項「第六十四条第一項に規定する政令で定める要件は、当該工事に係る契約において、その請負の対価の額の二分の一以上が当該工事の目的物の引渡しの期日から一年を経過する日後に支払われることが定められていないものであることとする」というもの。
これら全てを満たすと長期大規模工事となり、満たさないものははそれ以外の工事としてみなされます。どちらの扱いになるかによって税務上の取り扱いも違いが生まれるので、まずはここをしっかりチェックしましょう。
工事進行基準と消費税
国税庁によると、「その課税期間において売上処理した金額の部分については、その課税期間に資産の譲渡等を行ったこととすることができます」とあります。また工事進行基準での処理を行ったものについては、所得税または法人税の申告にあたって資産譲渡時を基準として申告することも可能です。
つまり工事進行基準を採用したからといって消費税について特別大きな変化が生まれるわけではなく、実際の資産、つまり完成したビルなどを受け渡した時を基準として申告できるということです。
工事進行基準に即して税務処理をしていくことは、建設企業として必須のもの。完成工事基準との違いも明確にし、しっかりと理解していきましょう。